
院長:高木お気軽にご相談ください!


「最近、朝の歩き始めに足の付け根がズキッとする」「長時間立ち仕事をしていると股関節のあたりがだるくなってくる」という状態が続いていませんか。股関節が痛いという症状は、最初は「ちょっとした疲れかな」と見過ごしてしまいがちですが、放置すると日常生活のあらゆる動作に支障をきたすようになります。
「年齢のせいだから仕方ない」と諦めてしまう前に、原因を正しく知ることがとても大切です。今回は、股関節の痛みが起きるメカニズムついてお伝えします。


股関節の痛みは膝や腰と密接に連動しています。
股関節とは、骨盤と太ももの骨(大腿骨)がつながっている部分で、体全体の体重を支えながら脚を前後・左右・回旋と多方向に動かすことができる、全身の中でも特に負担が大きな関節です。「立つ」「座る」「歩く」という日常のほぼすべての動作に関わっているため、股関節に痛みや動きの制限が出ると、生活の質が大きく低下します。
股関節の痛みは、股関節そのものに出ることもありますが、お尻・鼠径部(そけいぶ:足の付け根の前面)・太ももの外側・大腿の内側など、周辺に広がって出ることも多く、「どこが痛いのかよくわからない」と感じる方も少なくありません。このような痛みの広がりが、原因の特定を難しくしている一因です。
股関節の痛みの原因は一つとは限りません。複数の要因が複合して症状を引き起こしていることが多く、丁寧な問診と検査なしに原因を特定することは難しいです。代表的な原因を理解しておくことで、自分の状態がどれに近いかを考えるヒントになります。
股関節の痛みの原因として最も多いのが変形性股関節症です。股関節を包む関節軟骨が少しずつすり減り、骨同士が直接こすれ合うことで炎症と痛みが起きます。特に女性に多く、日本では股関節が浅い「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」という生まれつきの構造的問題を背景に持つ方に発症しやすいとされています。歩き始めに股関節がつっぱる、長時間歩くと足の付け根がだるくなる、という症状が典型的な初期サインです。
臼蓋形成不全とは、骨盤側の関節のくぼみ(臼蓋)が浅く、大腿骨の頭を十分に包みきれていない状態です。関節の接触面積が少ないため、軟骨への圧力が集中しやすく、変形性股関節症に進行しやすい構造的リスクを持っています。「10〜20代の頃から股関節が硬い・動かしにくいと感じていた」「若い頃に股関節が浅いと言われた」という方は要注意です。
長時間の座り仕事や運動不足によって股関節周囲の筋肉、特に大腿筋膜張筋(太ももの外側)や腸腰筋(骨盤から太ももをつなぐ深部の筋肉)が硬くなると、股関節への負荷が増して痛みが生じます。レントゲンで異常なしと言われているのに股関節が痛い場合、これらの筋肉や腱・靭帯の問題が原因であることが非常に多いです。
骨盤が左右・前後にずれていたり、回旋している状態では、股関節にかかる荷重が左右で不均等になります。「右側だけ股関節が痛い」「片側ばかりに症状が出る」という場合、骨盤の歪みと体の使い方の偏りが関係していることがあります。長年の姿勢習慣や仕事での体の使い方が、徐々に股関節への負荷を蓄積させていきます。
ランニング・サッカー・バレエなど股関節を繰り返し大きく動かすスポーツでは、股関節周囲の筋肉・腱・滑液包に過負荷が蓄積し、炎症や損傷が起きることがあります。特にフォームや体のアライメントに問題があると、特定の組織に集中して負荷がかかります。
自分の股関節の痛みがどのパターンに当てはまるかを確認することで、対処の方向性を判断しやすくなります。以下の表を参考にしてみてください。
| 症状のパターン | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 歩き始めに足の付け根がつっぱる・ズキッとする | 変形性股関節症の初期・大腿筋膜張筋の緊張 |
| 長時間歩くと足の付け根がだるくなる | 軟骨の摩耗・腸腰筋の疲労 |
| 靴下をはく・足の爪を切るのがつらい | 変形性股関節症の進行・股関節可動域の制限 |
| あぐらをかくと股関節が詰まる感じがする | 臼蓋形成不全・骨盤の歪み |
| 右側または左側だけが痛い | 骨盤の歪み・体の使い方の偏り |
| レントゲンで異常なしと言われたが痛みが続く | 筋肉・腱・神経の問題(画像に映らない原因) |
| 夜間に股関節が痛んで寝返りが打てない | 変形性股関節症の進行・大腿骨頭壊死(要受診) |
「まだそれほど強い痛みではないから」と様子を見ている間に、股関節の問題は確実に進行します。特に変形性股関節症は一度進行した軟骨の摩耗は元に戻らないため、早期対処が非常に重要です。
股関節の痛みをかばって歩き方が変わると、今度は膝・腰・反対側の股関節に余分な負担がかかります。「股関節が痛い→かばった歩き方をする→膝痛・腰痛が同時に出る」という連鎖は非常によく見られるパターンで、放置するほど改善に時間と労力がかかるようになります。最終的に人工股関節置換術が必要になるケースもあるため、「気になり始めた段階」でのケアが最も重要です。
股関節の痛みの程度が軽い段階では、日常生活の中でのケアが症状の進行を抑えるうえで効果的です。ただし、痛みが強い状態や急性の炎症がある場合は、無理なストレッチや運動は悪化の原因になりますので注意が必要です。
片膝立ちになり、後ろ脚の股関節の前面をゆっくり伸ばします。骨盤を前傾させず、背筋をまっすぐに保ちながら30秒キープします。腸腰筋の柔軟性が上がることで、股関節にかかる前方への引っ張り力が軽減されます。左右それぞれ行い、1日2〜3セットを目安にしてください。
長時間の座り仕事の合間に、1時間に1回は立ち上がって数分歩くことが重要です。座りっぱなしは腸腰筋・大腿筋膜張筋を縮めた状態で固めてしまい、股関節への負荷を蓄積させます。立つ・歩くという動作を意識的に挟むだけで、股関節周囲の筋肉と血流の状態は変わってきます。
椅子に座るときは骨盤を立てること(骨盤が後傾して背中が丸まらないこと)を意識してください。膝と股関節の角度が約90度になる椅子の高さを選ぶことで、股関節への圧迫を最小限に抑えられます。
「年齢のせい」「手術になるかもしれない」と一人で抱え込んでいる方に、ぜひ伝えたいことがあります。股関節の痛みは、適切なタイミングで正しいアプローチを取れば、必ず改善できます。加齢による変化があるとしても、適切なケアと体のバランスを整えることで、痛みが出にくい状態にすることは十分に可能です。「もう遅いかもしれない」と思わず、気になる症状がある方はいつでもお気軽にご相談ください。

