
院長:高木お気軽にご相談ください!


「最近、長時間座ったあとに立ち上がると膝の裏側がつっぱる感じがする」「歩いているときに膝の前だけでなく裏側にも痛みが出るようになってきた」という方はいませんか。膝痛の中でも膝の裏側の痛みは、その原因が膝の前面の痛みとは異なるケースが多く、見落とされやすい症状のひとつです。
「まだそこまで強い痛みじゃないから」と放置してしまう方も多いのですが、膝の裏の症状には早めに気づいて対処することが大切です。今回は、膝の裏に出る痛みや違和感の原因を丁寧に解説していきます。


原因をきちんと特定して、体全体から整えることが改善への近道です
膝の裏側(膝窩部・しつかぶ)には、靭帯・筋肉・神経・血管・滑液包など、多くの組織が集まっています。そのため、痛みや違和感が出る原因も一つではなく、複数の疾患や状態が関係していることがあります。どの原因に当てはまるかを知ることが、適切なケアの第一歩です。
膝の裏側がぷっくりと腫れている、押すと柔らかいコブのようなものがある、という場合はベーカー嚢腫の可能性があります。これは、膝関節内の炎症によって過剰に産生された関節液が、膝裏の滑液包(かつえきほう)に溜まって袋状に膨らんだ状態です。
変形性膝関節症や半月板損傷など、膝の内部に炎症が起きている疾患の二次的な症状として現れることが多く、ベーカー嚢腫そのものを治療するだけでは根本解決にならず、膝関節内の炎症を抑えることが本質的なアプローチです。
太ももの裏側にある筋肉群「ハムストリングス」が緊張・硬化すると、膝の裏側に引っ張られるような痛みやつっぱり感が出ます。デスクワークで長時間座り続けることでハムストリングスは縮んで硬くなりやすく、立ち上がったときや歩き始めに膝裏の不快感として現れます。スポーツ中の急な動作で損傷(肉離れ)が起きると、膝裏に鋭い痛みが出ることもあります。
膝の裏側に位置する小さな筋肉「膝窩筋」は、膝の回旋動作を安定させる役割を担っています。この筋肉が疲労や過緊張によって硬くなると、膝を曲げ伸ばしするときや階段を下りるときに膝裏にじわじわとした痛みや違和感が出ます。膝窩筋の問題は画像診断では発見されにくく、「検査では異常なしと言われたのに膝裏が痛い」という方の原因として見逃されやすいものです。
膝関節の内側と外側にあるクッション材「半月板」が損傷すると、膝の内側・外側だけでなく裏側にまで痛みや腫れが広がることがあります。膝を深く曲げたときに膝裏が強く痛む場合は、半月板損傷が関与している可能性があります。スポーツ中の外傷だけでなく、加齢による変性で徐々に損傷が進む場合もあります。
膝の裏が赤くなっている、触れると温かい、強い張り感と痛みが急に出た、という場合は血栓(血液の塊)が静脈に詰まる深部静脈血栓症の可能性があります。これは放置すると血栓が肺に移動する「肺塞栓症」という生命に関わる状態につながる危険があるため、このような症状が突然出た場合はすぐに医療機関を受診してください。
膝の裏の症状がどの原因によるものかを見分けるためのポイントをまとめました。ご自身の状態と照らし合わせてみてください。
| 症状のパターン | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 膝裏がぷっくり腫れている・柔らかいコブがある | ベーカー嚢腫 |
| 長時間座った後に立つと膝裏がつっぱる | ハムストリングスの緊張・膝窩筋の硬化 |
| 膝を深く曲げると膝裏に鋭い痛みが出る | 半月板損傷・ベーカー嚢腫 |
| 階段を下りるときに膝裏がじわじわ痛む | 膝窩筋の緊張・変形性膝関節症 |
| 突然、膝裏が赤く腫れて強い張り感がある | 深部静脈血栓症(要注意・受診推奨) |
| 膝の前面の痛みと同時に裏側も痛む | 変形性膝関節症・半月板損傷の進行 |
「まだそれほど痛くないから大丈夫」と思って膝裏の症状を放置し続けると、どのようなリスクがあるのかを知っておくことが大切です。症状が軽いうちこそ、早めのケアが最も効果的です。
ハムストリングスや膝窩筋の慢性的な緊張は、放置するほど筋肉の柔軟性が失われ、膝関節の可動域が狭くなります。正座や深くしゃがむことが難しくなり、日常生活の動作が徐々に制限されていきます。ベーカー嚢腫は自然に縮小することもありますが、膝関節内の炎症が続く限り繰り返し再発します。根本にある膝の炎症を放置することで変形性膝関節症の進行が加速する場合もあります。
「痛みはまだ我慢できる」という段階こそが、最も効果的にケアできるタイミングです。症状が重くなるほど改善に時間がかかりますので、気になる段階で早めに動くことをおすすめします。
膝の裏の症状を和らげるために、日常生活の中で取り組めるケアをご紹介します。症状の強さや状態に合わせて、無理のない範囲で行ってください。
椅子に浅く座り、片足をまっすぐ前に伸ばしてつま先を天井に向けます。そのままゆっくりと上体を前傾させ、太もも裏のストレッチ感を感じながら20〜30秒キープします。左右それぞれ行い、1日2〜3セットを目安にしてください。力を入れすぎず、呼吸を止めずにリラックスして行うことが大切です。
椅子に座り、膝を軽く曲げた状態で膝の裏側をやさしく指で押しながら小さな円を描くようにほぐします。痛みが強い場合は無理に押さず、温めてから行うと効果的です。入浴後に行うのがおすすめです。
長時間の座り仕事では、膝の裏を圧迫しない姿勢を心がけることが重要です。椅子の高さを膝が直角になるよう調整し、足裏が床にしっかりつく状態で座ることで、膝裏の筋肉や血管への圧迫を減らすことができます。1時間に1回は立ち上がって少し歩くだけでも、膝裏の血流改善に効果があります。
膝の裏の痛みを根本から改善するためには、膝だけを診るのではなく、体全体のバランスを確認することが重要です。骨盤の歪みや股関節の可動域の制限、足首のアライメントの問題が膝裏への負荷を高めているケースは非常に多く見られます。
ハムストリングスや膝窩筋の緊張を取り除きながら、骨盤・股関節・膝・足首の連動性を整えることで、再発しにくい膝の状態をつくっていきます。
膝の裏の痛みや違和感は、「なんとなく不快」という段階から始まって、気づいたときには日常生活に大きく支障をきたす状態になっていることが少なくありません。膝の痛みは体全体のバランスの乱れが集約されて出てくるサインです。「歳だから仕方ない」と思わず、原因を正しく知って根本から向き合うことで、必ず改善できます。一人で悩まず、気になることがあればいつでもご相談ください。

