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公園の芝生に赤ちゃんをおろしたら、足をピョンと持ち上げて大泣きした…なんて経験はありませんか。
「かわいいけど、これって大丈夫?」「感覚過敏かな」と心配になってその場でスマートフォンを開いた方も多いのではないでしょうか。芝生に対する赤ちゃんの敏感な反応はベビー整体にいらっしゃるお母さんからもよくご相談いただくテーマです。
今日は芝生を嫌がる理由の仕組みから、発達への関わり、慣れさせていく方法まで丁寧にお伝えします。


芝生を嫌がる反応は多くの赤ちゃんに見られる自然なことです。
「なんで芝生だけあんなに嫌がるの?」と不思議に思ったことがある方は多いはずです。実はこの反応、赤ちゃんの足裏に備わっている感覚の仕組みと深く関係しています。怠けているわけでも、臆病なわけでもありません。赤ちゃんの体が正直に反応しているからこそ起きる現象です。その背景を理解すると、焦らず対応できるようになります。
足裏には「メカノレセプター」と呼ばれる感覚受容体が全身の中でも特に密集して存在しています。これは地面の情報(硬さ・凹凸・温度・テクスチャーなど)をキャッチして脳に送るためのセンサーです。
芝生はひとつひとつの葉がチクチクとした刺激を持ち、かつ不均一に動くという複雑な感触を持っています。大人はすでにさまざまな地面を歩いた経験から芝生の感触を「大丈夫なもの」として認識していますが、赤ちゃんにとってはまだ未知の強い刺激です。脳が「これは何?」と過剰に反応するのは、むしろ感覚センサーがしっかり機能しているサインでもあります。
赤ちゃんの足裏はまだ歩行による摩擦を経験していないため、皮膚が非常に薄くやわらかい状態です。大人の足裏と比べると、同じ芝生の刺激でも感じる強さが全く違います。チクチク感を文字通り全力で受け取ってしまうため、嫌がるのは当然と言えます。
生まれながらに備わっている「足底把握反射」という原始反射も、芝生への反応に影響しています。足裏に不意の刺激が加わると、足の指をぎゅっと丸めたり、足を持ち上げたりする反射的な動きが出やすくなります。芝生に降ろされた瞬間の「足を上げる」「体をのけぞらせる」という反応は、この原始反射が絡んでいることがあります。
SNSで「芝生を全力拒否する赤ちゃん」の動画を見て笑いながらも、「うちの子も同じだけど…まさか感覚過敏?」と不安になってしまうお母さんも多いと思います。結論から言うと、芝生を嫌がること単体で感覚過敏や発達障害のサインとは言えません。多くの赤ちゃんに見られる自然な反応です。
月齢が上がるにつれて少しずつ慣れていく場合は、発達上の問題とは考えにくいです。一方、次のような状態が1歳半を過ぎても続くようであれば、小児科や発達専門家への相談を検討してみてください。
ひとつでも当てはまるからといって即座に問題があるわけではありませんが、「芝生を嫌がる」という単一の反応で心配するより、日常生活全体の中での感覚への反応パターンを総合的に見ることが大切です。
「嫌がるなら無理させなくていいか」と思う方もいるかもしれません。でも、芝生のような不均一な自然素材の上で遊ぶことには、発達の観点からとても大きな意味があります。慣れていく過程そのものが、発達を豊かにしてくれます。
芝生の上に立ったりハイハイしたりすることで、足裏の感覚センサーに豊かな刺激が届きます。この刺激は脳に送られて、バランス感覚・固有受容感覚・触覚の統合(感覚統合)を促します。整備された平らな地面ばかりで過ごすよりも、芝生や土・砂などの不整地で遊ぶことで、足裏センサーの感度が磨かれ、バランス感覚や体幹の発達が促されると考えられています。
感覚統合とは、視覚・触覚・前庭覚(バランス感覚)・固有受容感覚などの複数の感覚情報を脳がまとめて処理し、スムーズな動作や行動につなげる働きのことです。芝生の上での遊びは、凹凸のある地面のバランスを取りながら(前庭覚)、チクチクした感触を足裏で感じ(触覚)、体の位置を把握する(固有受容感覚)という複合的な感覚が同時に使われる、感覚統合の練習場として優れた環境です。
芝生の場所は多くの場合、屋外の自然の中にあります。風の音や鳥の声、草の匂い、光と影のゆらぎ…室内では得られないさまざまな感覚情報が一度に届けられます。これらの豊かな環境刺激は、赤ちゃんの五感の発達と脳の情報処理能力を広く育てます。
「嫌がっているのに無理やり芝生に降ろすのはかわいそう」というお母さんの気持ちはよくわかります。大切なのは「無理に慣れさせる」ことではなく、「安心できる方法で少しずつ経験を積ませる」ことです。焦らず、赤ちゃんのペースに合わせて進めていきましょう。
最初から素足で芝生に降ろすのではなく、靴下を履いたままで芝生の上に立たせてみましょう。刺激が和らいだ状態で「ここは安全な場所」という感覚を先に積み重ねることが大切です。抱っこしたまま足だけを少し芝生に触れさせる方法も有効です。
お母さんの膝に座らせた状態で、大人が先に芝生に手をつけて「チクチクするけど大丈夫だよ」という様子を見せてあげましょう。赤ちゃんはお母さんの反応をよく見ています。怖がらない大人の姿が「安全サイン」になります。
好きなおもちゃやボールを芝生の上に置いて、自分から手を伸ばす・ハイハイで近づく動機をつくりましょう。嫌がる感覚よりも「取りたい!」という欲求が上回ったとき、赤ちゃんは自然に芝生への一歩を踏み出します。この「自分から動く」という経験が、慣れていく最良の方法です。
靴下なしで芝生に触れることを、短時間から繰り返して経験させていきましょう。回数と時間を少しずつ増やしていくことで、足裏の感覚センサーが「これは大丈夫な刺激」と学習していきます。焦らずに、同じ公園に何度も行くことが近道です。
いざ芝生デビューをしようと思ったとき、どんな場所でどの時期から試せばよいか迷うこともあります。少し確認しておくと、より安心して外遊びを楽しめます。
首がすわり、腹ばいができるようになった生後4〜5か月頃から、芝生の上で体を支えながら腹ばい体験をさせることができます。お座りができるようになった7〜8か月頃からは、芝生の上で座らせてみるのもよいでしょう。ハイハイや立ち上がりの時期になると、芝生の上での動きがより豊かになります。
公園によく見られる野芝は比較的チクチク感が強く、姫高麗芝などはやわらかいものもあります。初めての芝生デビューには、やわらかめの芝生が使われている公園を選ぶと赤ちゃんが受け入れやすいことがあります。また、露や水で濡れている芝生は肌への刺激が和らぐこともありますが、冷たさや汚れも考慮して時間帯を選びましょう。
「芝生を嫌がるってこんなに理由があったんだ」と思ってもらえていたら嬉しいです。嫌がる反応もかわいいし、その子なりの体の正直な声でもあります。慌てて無理に慣れさせようとしなくても、焦らず少しずつ経験を重ねていけば、必ず芝生の上でのびのびと遊べる日が来ます。
「うちの子の反応、少し気になるな」「足裏の感覚発達について相談したい」と思ったら、一人で抱え込まないで気軽に声をかけてください。赤ちゃんのことを一緒に考えていきましょう。



